カッツェにしてもいいですか

お酒を飲んでサブカルチャーに触れたり北方謙三に抱かれたりするブログです。

飲酒の品格其一

・間宮(かんきゅう)は目を覚ました。どうやら、三月二十三日からの記憶がない。エア盧俊義を背負って北京大名府から歩き続けた自分を抱きとめてくれた朱富の店に寄る。
「魚肉饅頭が食いたくなって、ここへきた」
「兄の味を受け継ぐ、それが志だと思うようになった」
「それも、今の私ならわかるような気がする」
「今でもお前が北京大名府からエア盧俊義を背負って歩いてきた事が信じられん。なにせエアだからな」
「私も覚えていない。安道全が言うには、死域というものに入っていたらしい」
「らしいな。死域というものに入ると、人が人でなくなるという。人生というものは、燕青では全くないお前にも、盧俊義を背負わせるなにかがあるのだな」
「私は、これを人生の重みと捉えず、地縛霊か水子か脳内彼女彼氏か、具体的にはエア盧俊義、そういう類だと考えている」
「いくらか結論がふりだしに戻っている気もするが、いずれにしても、禍々しいものなのだな」
「そうともいえるかもしれん」
「多分、そうとしかいえないとは思うが」
間宮に酒を注ぎ、朱富は自分にも盃を用意した。それが必要だと思ったからだ。そうでなければ間宮のありようは見えない。そう思った。
「私はかつて、鯨酔公の仇名で呼ばれていた。今では泥酔公と呼ばれている」
「わかる。いや、わかる気がするといった事だが。すまんな、俺は自らを揉みに揉むほどには呑まんのだ」
聞くと、くったくのない笑みを浮かべ、間宮は魚肉饅頭を一口に飲み込み、湖のほとりから梁山泊を見つめる。
ふと梁山泊から目を反らし、目の前に朱富がいるにもかかわらずあいほんを取り出し、間宮はついったーでつぶやいた。
「ところで、酒が呑みてえな…だってもう二十時間も呑んでないなう……」
 

・土曜には新宿きくやで牛の丸腸焼き(もちろん泥酔していたので名称うろ覚え)に舌鼓を四つ打ち、日曜には吉祥寺いせやでタイトにミニマる肉の満漢全席に歓喜のセレブレーションを浴び、その間飛び交う話題といえばプリキュアやらセーラームーンやら、ガンヘッドがひどい、特に高嶋政宏が政宏すぎて演技じゃなくてそれ本人やろということやら、(約一名はその意見にご立腹)いせやはトイレが共用なのでオレがトイレに行った際幼女が入ってきて鍵かかんなくてガチャガチャしてたよーなんて事を伝えたらみなぎる闘志まとう闘気といった方が約一名いたりで、それはもう、この官軍という名の阿片窟抜けなきゃダメになっちゃう、一刻も早く梁山泊へ行かないと、人が人でなくなってしまう、ありていに言うと人でなしになっちゃう!という思いに駆られました。お酒って素晴らしいですね。
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高田渡さんの往時を偲ぶ事が出来るのも乙です。
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・約一名の弟のとあるフォルダ名に「喜んでいる」というものがあった衝撃が当日を包み込んだのだけど、具体的には書かない方がいいと思いました。

・今自分が絶賛日テレで再放送されてるあしたのジョー2にはまっていることから、
 ・出崎演出の過剰さは異常であり、あれを小さい頃観てしまっているので『がんばれ元気』、ひいては実際のボクシングすら迫力ないものと感じてしまった
 ・実際の試合ではあんなにダウンした時バウンドしない(糸の切れたあやつり人形のように手足がしなりバウンド・フォー・パウンド)
 ・出崎基本動作「同じ所作を二回ないし三回繰り返したのち、描線豊かになった静止画に透過光差す」
 ・によって、迫力ある試合シーンに負けないくらい迫力ある白木お嬢様描写
 ・カルロス・リベラの一連のパンチドランカー描写にトラウマを抱いた患者数名
 ・オレの知り合いにはカミーユのラストとカルロスが蝶を追うさまをミクスチャーして記憶する症状を訴えるものも
 ・パンチドランカーの権威、ドクター・キニスキーのアメリカ訛りで語られるパンチドランカーの具体的症状に自らがパンチももらっていないのにあてはまっている事実(Fact)
 ・あ、それって単なるドランカーってことか!(それっていえてる!)
 ・わかる気がする。これだけ呑んでいれば。
 ・ジョー、勝負よ、シュ、シュッ、楽しいね……
 

・明けない夜はない。だが、明けない夜もある。そう、盧俊義は教えてくれた。今の自分にならわかるような気もする。
自分が、死域に入っていたという。しばらくは戦に出るのも止められているが、朱富に体術を教えるくらいは許された。今は正気を取り戻している。間宮はふと、
「このままでは日記がまた長くなりすぎるな……」
気付き、わける。いや、わける気になったという方が正しいかもしれない。二万の日記に林冲の率いる千五百、史進の率いる千の騎馬隊が同時に、且つ変幻に突っ込み、二つにわけた。二万の日記はまとまることができず、潰走をはじめつつある。(続く)